恋するワンコ
はっきりいって自慢なわけだが。
俺達ベナンディ家の長男――つまり、後継なんだけど――の。
ベネ兄――もとい、ベネス・ベナンディはエロい。
凄く、色々とヤバイ。
禁欲的で潔癖な容姿が逆に、エロさを煽っていて。
本当に最近特に切羽詰まってきている俺が、ここにいる。
「ベネ兄〜」
「どうした?」
ぎゅー、っと。
末っ子の特権というやつで。
長男のベネ兄に背中から甘えて抱き付くと、優しく応じられて幸せな気持ちになる。
ちなみに、今日は開拓記念日で探索は休憩。
ベネ兄は、お気に入りのソファで紅茶のカップを口に運びながら、開拓レポートを作成中。
俺にはよく分からないけど、なんでもリボルドヴェの開拓責任者に提出するんだそうだ。
何か手伝えることは無いかと思って、試しに手元を覗いてみても、理解不能の文字が並んでいて、根っからのアウトドア派な俺に出来る事なんか、何もなさそうだった。
「……むぅ。」
ベネ兄に抱き付いたまま、左肩に軽く顎を乗せると、まるで子どもをあやすような口調で、
「ほら、どうしたんだ? 言ってくれないと分からないだろう?」
「…次の探索予定は?」
――こういう、如何にも年下な扱いが、ちょっぴり不満だったりする。
「なんだ。外に行けなくて不満だったのか?
私はレポートがあるから、つきあってはやれないが…。
もし暇なら、リボルドヴェ周辺の採石場にでもいってきたらどうだ?
あの辺りなら、オリビアがいなくても大丈夫だろうし。
どうせ、ファルコムも暇を持て余して腐ってるだろうから、二人で行ってきなさい」
「…ベネ兄がいないなら、いかない」
「ハル…、私は忙しいんだよ。分かるね?」
「分かってる。だから無理は言わない。一緒に行けるようになるまで、ちゃんと待ってるよ。
俺は、ベネ兄と一緒がいいんだもん」
自分でも子どもっぽい言い草だと呆れつつも、結構これがベネ兄には効果覿面だったりする。
「……しょうがないな。
今日は無理だが、明日には少しくらい付き合えるように頑張るよ」
「マジで!?」
ぱっ、と分かり易く喜んだ俺をみて、ベネ兄は少し困ったようなふんわりとした笑顔を浮かべた。
「…ああ。だけど、お前が傍にいると集中出来ないだろう?」
「………う。…わ、かった」
最大の譲歩。ここで更に嫌だと突っぱねると、流石にベネ兄を怒らせてしまう。
なるべく傍にいたいから、部屋の前に三人掛けの長ソファでも移動させてこよう。
廊下は少し冷えるけど、毛布でも持ってくれば大丈夫だと思う。
「じゃ、…俺は邪魔だから、部屋から出るね。ベネ兄」
「ああ、すまないな」
「いーよ、俺がワガママ言ったからだし」
ここは素直に謝っておくのが吉。
ファルコムの奴には、ノーミソ筋肉とか馬鹿にされるけど。
これでも結構ベネ兄に関してだけは、知能犯だと思うんだよな、俺。
「じゃ、頑張ってね」
名残惜しいけど、そんな風に声を掛けて部屋の入り口から出てゆく。
手頃なソファを何処から調達してくるか、そんな事を考えながら、扉を閉めた。
ぐ、と足を割られ股間を膝で擦り上げられる感触に、ベネスは明らかに狼狽えた。
「ウォレックッ…! や、…めっ…!」
開拓レポートを仕上げるために、一人で部屋に篭っていたところに、父の元恋人――港町の娼婦をしていた女性らしく、当時既にベナンディ家の当主であった父は結婚を前提に考えていたが、彼女は突然別れを切り出し姿を消したそうだ――の息子で、見た目も中身も随分とワイルドな、明け透けに言えば族の類かと目を疑う程に柄の悪い男が訪ねてきた。何か問題でも、と問う間も無くソファのクッションの上に、押し込むように背中から倒されて、あれよあれよという間に服を乱され今に至る。
「Ah〜? なんで? つーか、溜まってンだよ。やらせろよ、ベネス」
「……ッ、そのようなッ。私は忙しいんだ。放してくれ、ウォレック!」
ベロリと面積の大きな舌が無遠慮に首筋を舐め上げる、その感触に肌を粟立てつつ、ベネスは必死の抵抗を試みた。体格の差はあるとはいえ、ウォレックの素養は魔導士(ウォーロック)だ。直接的な前衛タイプではなく遠距離攻撃型であるだけに、似た後方タイプの幻惑魔法士(ハイウィザード)である自分を、そうそう抑えていられるはずが無い――はずなのに、拘束は弱まるどころか益々力強く、振り解くどころか痛みさえ覚える程になっていた。
「……無駄な抵抗、ってやつだな。ベネース?
俺が魔導士(ウォーロック)だからって見くびるなよー?
見た目の派手さが楽しいいから魔導を使ってるだけで、むしろ拳でガチンコのが性に合ってっからよ」
愉しげに嘯くと、ウォレックはベネスのスラックスの前合わせ、そのジッパーをゆっくりと押し下げた。そうして器用に指を滑り込ませると、薄い下着の上からひどく優しげな心地で局部を撫で擦った。
「……っ、ウ、ォレックッ…!! や、どこをっ……!!」
「んー? アンタのおチンコ扱いてんだよ。Woo〜、やーらけーじゃねーの?
アンタのココ、未使用って感じすんなァ?
流石はお貴族様ってやつ? 箱入りムスコってか!」
「ばっ…!! や、やめないか! やめなさいっ!! ……やッ……、」
無骨な指先でぐにぐにと敏感な部分を揉みしだかれて、未だ他者の肌を知らぬ初雪の如き無垢な身体は、大袈裟な程に全身を跳ねさせ、本能的な脅えに竦むと、小刻みに震え出した。
「ンだよ。まさか、マジで初物か? なら、優しくしてやるから……、な?」
吐息を耳朶へ吹き掛け、下着の隙間から熱を帯び始めた鋭敏な場所に直接指を触れる。先走りに滲む先端を指の腹で捏ね回せば、閉じる事を封じられた両足の内腿が切なく痙攣した。
「い、……やっ。いやだッ…、はなっ……、 やっ……」
決して揺らがぬ高潔の意思、凛と美しい涼やかな目元、人形のように表情の乏しい美しい面、その眦にサァと挿す頬紅の鮮やかさに、ウォレックは好物を目の前にした野獣のように、大きく舌鼓を打った。
「Ah? 手じゃ物足りないって?
んじゃ、しょーがねぇなー。口でシテやるけど、悦過ぎて失神すんなよ」
「……っ! ち、ちがっ、いやっ、あッ!! あぁッ!!!」
懇願に響きを孕む制止の声など一切耳を貸さぬ横暴な男の、飢えた獣の如き凶暴な口が、がぶりと無遠慮に花芯を咥え込んだ。舌先で舐り、牙で齧り、有らぬ限りの技巧で以て可愛がれば、腕の下で脅え震えるだけの極上の獲物は、くん、と弓なりに綺麗な背を逸らして胸を喘がせた。
「っ、う。や、やめっ、ぁ……っ、ハ、るっ……、ハルッ…」
「Nn? ハル? ハルシオンの事か? An、甘ったれの末ガキの名をここで呼ぶたぁ…。
なんだ、実はそういう仲なのか?」
「……ッ、ち、がッ……、 ひっ!!? ア、やッ、……!」
前を喉の奥にまで飲み込まれながら、秘められた部位の最奥を太い指で無遠慮に突かれて、ベネスは襲い来る快楽の波と、何とも言い難い痺れるような感覚に翻弄されるがまま、いやいやと頭を振った。
「nA〜、別にどーでもいいか。アンタは俺に突っ込まれてアンアン悦がってりゃいーんだからよ」
「………ッ、だ、…、れが、 アッ、ひあっ……!?」
縫い止められたソファの上での乱暴、身心共に手酷く嬲られ、散々に弄ばれ、余りの衝撃と限りの無い快楽の渦に翻弄されながらも、理性の絲に必死で追い縋るベネス、強情な獲物の穢されぬ高潔にますます堕とし甲斐があると愉悦に舌先をチラつかせるウォレック――、
「ベネ兄から離れろーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
バーン!!!
強固な扉は蹴破られる勢いで左右へ開け放たれ、果たしてそこへ現れたのは、ベナンディ家の長兄であるベネスへ懸想する末の弟金髪の剣士開拓者――、ハルシオン・ベナンディだった。
「何やってんだよ!! この、クソウォーロックッ!!!」
「An〜、早速嗅ぎつけてきたか、ベナンディ家の番犬は優秀なこって」
「ウッサイ!! いいから、そこを退け!!!」
昂る感情に声を震わせながら、肩を怒らせ大股でベネスが押し倒されるソファへ近付いてゆく末っ子剣士。辛うじて冷静さを保っていられるのは、正面の扉からソファの背凭れが死角となって、散々に嬲られ淫蕩な姿を晒す兄の姿がまだ視界へ入っていないからで、
「……っ、ンッ…」
『大』が付く程の馬鹿犬とは言え、相手は腐っても戦士(ファイター)だ。ブチキレられて見境無く襲いかかられでもしたなら流石に旗色が悪い。滅多にない馳走を目の前に逃走は惜しいが、命あっての物種だと、ウォレックはベネスを犯す指先を抜いて、トン、と背後へ軽やかに飛び退いた。
「お兄様にクソだとか、ウルサイだとか、躾がなってねーなァ?」
「お前なんかを血縁なんて認めるものか!! ハイエナみたいに後から湧いてきやがって!!!」
「Wooo〜…、手厳しいこって。ヘイヘイ、じゃあ意地汚ねぇハイエナは、優秀なお犬様に噛みつかれない内にトンズラさせてもらうぜェ。
"後"は任せたからな、ボーズ?」
ニヤリ、と人を喰った笑いを浮かべ、ウォレックはテラスへ繋がる南向きの大窓からひらりと身を翻して消えた。飛び降りたのか、魔術で瞬間移動したのか、どちらにしろ追って捕まえるのは難しい。忌々しい男の存在に悪態を吐きつつ、ハルシオンはそこで漸く兄――、ベネスの方へ向き直った。
「ベネ兄! だいじょ……、……、………ッ!!!?」
「…、ああ…、なんとか…。
助かったよ、ハル…、突然で…吃驚してしまって……。
…ウォレックには、こんなの悪ふざけに過ぎないんだろうけど、……。
心臓に悪いから、出来れば次回から遠慮して――…、……? ハル?」
"後"は任せた。
ウォレックが残した言葉の意味を今更正しく理解したとて、後の祭り、後悔先に立たず。
「アイツ…、ぜってぇーブチ殺す…!!!」
ナニを何処にどうされたのか一目瞭然.。淫らにしどけなくも、あられない艶姿を晒す長兄を前に、理性を総動員させながら今にも爆発しそうな若さを全て憎悪へと、ベナンディ家の愛らしい末の子が呟いた台詞は煩悩に塗れた怨念に満ち満ちていた。
グラナド・エスパダの剣×幻です
ウィザード(♂)の余りのエロさによろめいて執筆
グラナドはとても綺麗なオンラインゲーです
観賞ゲーとしては上位ランクだと思います