※死にネタが苦手な方はご遠慮ください※






ほーむへ




 雨足は激しさを増して。
 ただ、呆然と灰色に垂れこめる空を見上げて。
 もう何も、考えたく無かった。
 けれど、愛しい人の最期の望みを。
 裏切る事だけは、どうしても。
 ――どうしても、出来ない。

「何時まで…、そうしてるつもりだ」
「………」
「米良を奴らに奪われてもいいのか」
「………」

 駄目、だ。
 嫌だ。
 せめて、せめて、愛しい貴方を。

 ベレッタM92F。
 銀色に輝く美しい銃身は。
 今は灰褐色の空を映し、くすんでいた。
 剥き出しのコンクリートを抉るように打ちつける。
 激しい雨。

「……めらを、つれて …かえり、ます…」

「――…そうしてやれ。
 入口に車を待たせてある。
 乗せてやれ」

「…… ええ」

 のろのろと。
 無造作に打ち捨てられた。
 ジェリコを二丁拾い上げ。
 ベレッタを懐に仕舞い込み。
 力無く俯く相棒の腕を肩へ回させる。
 白のスーツは赤銅色に薄汚れて。
 まだ生々しい傷痕が。
 ぱっくりと。
 口をあけていた。

「…… 、 …――っ 」

 重い。
 酷く、重かった。
 まるで鉛の袋を抱えているようで。

 雨の所為だけでは無く。
 視界は激しくブレて。
 脳裏を真っ赤に染める。
 憎悪に、世界が歪んだ。

「…早く運んでやれ。
 手伝われるのは、嫌なんだろ」

「 … ええ 」

 促されて。
 愛しい人の重みを肩に。
 一歩を踏み出す。
 雨は。
 激しさを増すばかりで。

「… たくみ さん …」

「なんだ」

「 めらを …つれかえったら。
 教えて ――…くれます か。
 おれが …どうしたのか」

「…ああ」

 感情の籠らぬ声で返される、確約。
 この人は。
 決して『約束』を破らない。

 雨は。
 激しい。

 空は。
 泣き続ける。

 温もりは。
 もう、二度と戻らない。

「 米良… 」

 囁く。

「 米良 …米良 」

 繰り返す。

「 どう… して 」

 分からない。
 ただ、

 愛し貴方の――最期の願いだけは。

 決して、裏切れない。





NEVER・・・



隠し続きです
続きというか、発作的に続けたくなったもの
本当に、こういう状況に陥ったなら
香織が取る行動はどんなものなのか
ちょっと真剣に考えた結果
米良の最期の願いを裏切る事は無いだろうと
そうすると『生きろ』と願った米良は
最後の最期まで狡猾で優しい大人ですね。