
#19
「オイ、まてや。ココに何の用事だ。兄ちゃんよ」
タバコをふかしながら、お決まりの文句。
いかにも、わるものーってカンジで、ちょっと笑える。
面からは、ただの金融事務所に見えるマンションの入り口で。
黒のスーツの強面さんに、肩を掴まれた。
まぁほらアレだ。
所謂、そういうお仕事のお兄さんってわけだね。
「別に殴りこみじゃないしねー。えーっと、国ちゃんに取り次いでもらえないかな」
「はぁ!?」
意気込んですごんでくる。
うーん、弱いものほど良く吠えるとか。
そういうの地でいく感じの子だなー。
まだ、若いみたいだし。
この世界でやっていくために、必死で肩肘張ってるんだろーな。
「米良が来たって言えばわかるよー。
ここで俺を追い返しちゃうと、多分、君が怒られちゃうけど。いいのカナ」
「……っ、チッ! 少し待ってろ!!」
「はいはーい」
下っ端君はちょっと悔しそうに舌打ちして、ドカドカと事務所の中に。
でもって、とっても慌てて引き返してきた。
「しっ、…失礼しました! 中へどうぞ! 国彦兄貴がお呼びです!」
「はーい。ありがとねー」
きっと、国ちゃんにしこたま怒られたんだろうなぁなんて。
容易く想像出切る。
コッチの世界のコって、単純明快だよね。
「よォ、来たか」
「来ましたよーん」
事務所の奥で、社長椅子に踏ん反り返る国サンに、へらりと愛想を振りまく。
「で、どうするんだ」
「んん? 何がー?」
「何がじゃねーだろ。兄貴の下へ戻る気はねーのか。アンタ」
「そんなのあるわけないよー」
やだなぁ、って照れ笑いしてみせると。
目の前の兇悪そーなお顔の人の機嫌が、急降下。
「なら、何の用事だよ。極楽トンボのアンタと違って、俺は忙しいんだ」
「んーと、ほら。俺から色良い返事が無い場合って――」
ジャカッ。
「きっと、香織を狙うんだろうなぁって思って」
白のスーツの袖部分から直接取り出した拳銃を、ゆったり構えて。
「で、お願いなんだけど。
国ちゃんから、伝えといてくれないかなー。
俺は、あの人の傍に戻る気は無いって」
「余程、今のパートナーが大事なんだな」
カチ、と安物のライターの音がして、国ちゃんは一服中。
俺の行動が、今はまだ――ただの威嚇だって、ちゃんと理解している。
「俺は、――アンタの事は嫌いじゃねぇ。
バカやってた頃に、散々世話にもなった。
恩義を忘れるなんざ、極道の中でも、畜生にも劣る行いだ」
国ちゃんの視線が、俺の――まだ巧く動かない右肩に移る。
「俺個人の感傷で言わしてもらえば、アンタは自由になってもいいと思う」
「あ、やっぱそう思う〜? やー、国ちゃんってばいいコだなー」
にへら〜って笑顔で応じると、苦みばしったそれでピシャリと。
「だが、これはアクマで俺個人の見解だ。
あの人には――通じねェよ」
「んー、困ったなぁ」
ちょこんと小首を傾げて、考え込む。
国ちゃんから口添えしてもらえば、ちょっとは好転するかなーって。
期待したのに、空振りもイイトコだよー。
やっぱ、俺が直接話付けに行くしかないのかなぁ。
「腕、大丈夫なのか」
「んんー? まぁ、そこそこねー」
「…悪かった」
「ええ〜? なんで?」
突然謝られても、全く意味が分からないし。
聞き返すと、国ちゃんは咥えていたタバコを、灰皿に押し付けた。
「アンタを狙ったのは、ウチの舎弟だ」
「ああ、やっぱりー。そうじゃないかと思ったよ」
ひらひらと左手を振ると、国ちゃんはガタッと派手な音をたてて――、
「……え、〜っと?」
「すまねぇっ…、俺の舎弟だと分かって見逃してくれたってェのに――」
両手を床について、額を擦り付けるようにしていた。
「俺は、これっぽっちもアンタの役に立てねェ…!
受けた恩義の一つマトモに返せねぇなんざ、極道の面汚しだ!」
「うん、や、気にしなくていいよー」
ぽんぽんって、なんだか哀愁漂う丸まった背中を宥めて。
袖から覗かせていた銃を収めて、俺はうーんと伸びをする。
「にしても、どーしよっかなぁ」
「…米良の兄貴…」
「――え…?」
久しく――聞きなれない呼び名に戸惑うのと同時に。
「本当に…、すまねぇッ――…!」
世界が暗転して、意識が中空に投げ出された。
米良ッちは、香織たんが好きです
なので、もし香織たんが邪魔だからって危害をくわえられたら
ブッチ切れするので、うっかり香織たんを狙えませんYO
ちなみに、米良っちは、
とことん自分の事には無頓着だといいと思います
天然記念マゾ・メラっち。らぶりーすぎ。
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