
#23
兄さんと米良さんが、その奇抜なセンスを共通していることは知っていたし。
それだけじゃないだろうけど、その、一般には理解し難い趣味の一致で。
特に仲良しなのは、理解してるつもりだった。
だけど、米良さんは普段大体は香織さんと一緒に行動しているし。
兄さんは、誰かと一緒にいるとすれば、殆ど事務所の誰かだった。
だから――この構図は、ちょっと、かなり面食らってしまった。
「オーイ。いい加減、離れろ。だっこちゃん人形か。お前は」
「……うー」
「昼メシ買出し班が戻ってきたんで、食いたいんですけどー」
「…いいよ。このまま食べて」
「ついでに、オナラとウンコもダダモレまで、カウントダーウン!」
「美少年が、そういう事言っちゃダメだよーぅ…」
「いーんだよ。俺は魔性の美少年だからな」
ハッハッハッハと、無意味に胸を張る兄さんを。
取り合えず解放して、それでも、客人用ソファに突っ伏したまま。
突然の来訪者である米良さんは、なにやら、落ち込んだ様子だった。
「で、どーしたんですか?」
取り合えず皆にお茶の用意をして、ストンと兄さんの隣に座ると。
「半径50メートル内に棲息するな。ウン恒」
と、鉄拳制裁された。
しくしくしく。
仕方ないから、正宗さんの方に座りなおす。
「どーもこーも、香織からパートナー解消希望出されてるんだってよ」
答えない米良さんの代わりに、兄さんが吐き棄てる。
「え? 香織さんから? 米良さんに? なんで?」
あれだけ仲良しなのに。
――というか、所謂、致しちゃってる仲…らしいのに。(照)
突然、パートナー解消とかいう話に至る経緯が、全く分からない。
「知るかよ」
綺麗な足を組みなおして、ふんぞり返る兄さん。
「なんか喧嘩したとか?」
正宗さんがひたすら落ち込む米良さんに訊ねると、ふるふると首を振って、無言で否定のアクション。
「全ッ然、心当たりがねーんだとよ。
で、直接、香織をとっ捕まえて問い詰めようとしても、つかまんねーんだと」
「って、確か一緒に暮らしてたよな。ンなもん、部屋に戻るのを待ちかまえりゃ…」
「帰ってこねーんだとさ。で、三日間、色々と手回しされて全く顔を逢わせられてないんだとよ」
「うわ。そりゃ、避けられてるねー」
あ、米良さんのオーラが更にどんよりになった。
「あ、あの。それで、どうしてココに…?」
「オウ。よく気がついた、ヒマラヤペンペン草。
このアホ、香織をとっ捕まえて、自分の前につれて来いちゅー、依頼をしにきやがった」
「あー…」
なるほどー、と。
兄さんの、ワケの分からない罵倒はスルーして、納得する。
「あー…、じゃねーよ。ボケ。ンで、俺等がバカップルの別れ話に巻き込まれなきゃなんねーんだよ。勝手に、痴情で縺れろ」
「兄さんッ!」
「巧美〜…。流石に、ダメージ受けてんだから、手加減してやれよ」
「分かれ話じゃないもん〜」
メソメソメソ。
米良さんの周囲の空気が、じめっと湿り気を帯びた。
「げッ、元気出してくださいよッ! その依頼受けますから!!」
「はッア!??」
心底、ヤル気のなさそーな兄さんが、不満の声を上げる。
「はーいはい。文句言わない。どんな依頼でも受けるのが、ウチのモットー」
でも、ここは事務所としての方針に適った決定なんだし、うん。
お、俺は悪くないもんっ。
正宗さんも味方だし。
「ありがとー。恒ちゃん。正宗くーん」
そこでハジメテ顔を上げ。
パッ、と花が綻ぶように喜んで見せる米良さんの様子が。
なんだか、可愛いなーと。
ちょっとでも思ってしまった自分に、ちょっと鬱がはいりつつ。
未だに、ぶーぶーとブーイングを飛ばす兄さんを横目に。
俺たちは、香織さん捕獲作戦に乗り出した。
恒ちゃんは、常にいい子です。事務所の良心。オアシス。
ブラコンでハヘタレですけどネ☆
巧美様は、米良と香織の仲を引っ掻き回すのは大好きですが
ホンキの痴話げんかに巻き込まれるのは、大嫌いです
流石、巧美様。ブラボー自分勝手。俺様・神☆