
#28
熱々、ぢぢぃランド。
巧美ちゃんの友達の、恭宇夜くんという子のツテで。
社長の護衛という名目でリゾート地へ一泊二日の旅行。
勿論、今回は香織も一緒で。
わくわくした気分のままやってきた現地で。
香織は心に深手を負ってしまった。
「かーおり。お風呂空いたよ〜?」
どよんとしたまま、ベッドの上で体育座りをするパートナーに。
風呂上りのほこほこしたまま、俺は抱きついた。
冷房の効いた部屋は、結構上等で。
ベッドも柔らかくて、キモチイイ。
そんな中で、香織の周辺だけ重く沈んでる。
理由は簡単。
「そんなに痛かった?」
例の、巧美ちゃんのビート板殺法のダメージだ。
「………」
「かーおりー。折角、リゾートで骨休めに来たんだし。
そろそろ、元気になってほしいなー」
黒の背広に、わふわふと懐くと。
ぴくりと肩が反応した。
「…米良」
「んー?」
なぁに〜? と、背中から抱きついて返す。
「俺は…、もう駄目だ。
あの単語の前には無力だ。もう、SPとしての責務を果たす事が出来そうに無い」
「ええー? でも、ビート板なん…えぇえっ? 香織ッ?」
て単語、普段滅多に口にするもんじゃないよ? と言いかけて。
香織がバタリと倒れてしまった。
うーん、これは重症だ。
「ごめんねー、香織。しっかりしてー」
ふわもこの頭を撫でて、丁度、犬が伏せるような格好でベッドに突っ伏し。
そっと様子を伺うと、途方に暮れた眼差しにかち合った。
「…情けない…」
「うーん」
これは、どーしたらいいかなぁ、と小首を傾げて。
余りに香織が可愛く落ち込んでいるものだから。
ついつい、イタズラしたくなってしまった。
「ね、香織。まだ痛い?」
「…流石にもう…、ただ、言葉を聴くと反射的にカラダが竦んでしまう」
「そっか」
にっこり、微笑んで。
そして、薄く開けた唇から、チロリと舌を出した。
「じゃ、早くよくなるように、おまじないしてあげよっか」
「ッ、メラ…」
俺のしようとしていることを察して。
香織は上擦った声で、戸惑う。
「じっと、してて、ね」
カチャ、と金属の音。
なんてことの無い日常のそれが、今は、酷く卑猥に響く。
今し方の衝撃でまだ少し竦んだままのソレを、丁寧に口腔に導く。
「メ、ラ…ッ。駄目だ、シャワーを…」
「一回したでしょ?」
「それは、…海の後直ぐの事――だろッ…」
「十分だよ。もう…黙って?」
折角ノッてきたのに、ここで白けさせたくないんだよね。
社内でも融通が利かないと評される香織のマジメさは、決して嫌いじゃないけれど。
今は、言うことを聞いてあげない。
舌全体で半勃ちになったモノを、下から上に、宥めるように舐めてゆく。
自慢じゃないけど、舌技には結構自信あるんだよね。
「…ッ、メラ…っ」
俺の髪の間に、二丁拳銃を自在に操る華麗な指先が、切なく絡む。
香織の吐息が――甘く熱くなるのを感じる。
どうしよう、すごく――香織が可愛い。
なんだか今、とっても狼な気分だ。
「ね、香織」
「…――? な、…んだ?」
焦点の合わない蕩けた瞳と掠れた声。
ドキドキしてしまう。
「調子悪いなら、――…俺が、シテいい?」
ぱたり、ぱたり、尻尾を振ってみる。
「…? な、にを…?」
香織の返答を待たずに、前を銜え込みながら、背中から指を這わせた。
「ッ、メラッ…!」
慌てて制止の声を上げる香織に。
俺はお預けを言いつけられた犬のように、本当に動きをストップする。
「えー、駄目?」
無理矢理進んでしまえないことも無いと思うけど。
俺はずるくて臆病なオトナだから。
そんなことは怖くて出来ない。
「駄目に決まってるだろうッ!」
にゃーにゃーにゃーにゃー、毛を逆立てて怒り出す姿も可愛い。
どうしよう、凄く、すごく、大好き。
「でも香織、…出来そう?」
ちゅ、と殊更音を立てて茎に吸い付くと。
香織が息を詰めたのが伝わった。
うーん、なんだかコドモに悪戯をするイケナイオトナな気分。
だって、香織って実際、成人してないし。
普段からスーツ姿でいるのも、少しでもハクをつけるためなんだよね。
決して口には出さないけれども。
少し寂しいけれど、コンプレックスを表に出さないトコも。
潔くて、気高くて。
とても香織らしいと思う。
「…バカにするな」
少し、ムッとした口調が可愛い。
別にバカになんてしてないんだけどなぁ、ってヘラリと笑うと。
苛立った様子でベッドにひっくり返された。
「ココまでしてもらって、『出来ない』じゃ流石に情けないからな」
いつの間に覚えたのか、シニカルな笑みで香織は不敵に言い放った。
「…香織が望むなら、何時だってしてあげるよ?」
香織とのセックスには、俺の口淫はあまり披露する機会が無い。
「…毎回は遠慮する」
「えー? 俺、ヘタ? 悦くない?」
「逆だ。バカ」
理由は、推して測るべし。
「…えへー。大好きだよ〜、香織」
可愛くて仕方が無い、俺の宝物に組み伏せられたまま抱きついて。
もう何万回と繰り返した言葉を更に降り積もらせる。
「……愛してる。メラ」
深い――キス。
伝う指先が、バスローブを肌蹴させる。
甘い夜の到来を告げる、互いの乱れた吐息が、もう一度絡もうとしたときに。
突然、惨劇はやってきた。
「うおーい。米良〜、香織〜。
外で花火するから出て来いよ」
ドチラサマデスカ? なんて訊くまでもない。
巧美ちゃんだ。
うーん、仕方ないなぁ。
「香織、ちょっと退いてもらっていいかな」
ココまで煽られて直ぐに花火なんて、参加できるわけ無い。
だから、ちょっと顔を出して、早く休むからって断りを入れるつもりだった。
――けど。
「…? 香織?」
香織から受ける拘束は解けるどころか、一層強くなった。
えーと。
これだと、身動きが…取れない、よ、ね?
「おらおら、イチャついてねーで、とっとと出てこい。このホモップルども。
入るのは分かってんだ」
ガンッ、と扉に蹴りを入れられる。
それと、兄の横暴を諌める恒ちゃんの声も。
「兄さん、二人とも、もう休んでるかもしれないだろ」
「ぶぁーか。大企業の社長付き護衛なんざやってる連中が、これだけ扉で騒がれて寝っぱなしなワケあっか」
ううん、ごもっとも。
っていうか、そもそも寝てなんかいないんだけどね。
いや、別の意味では寝てる真っ最中だったりするんだけど。
(香織? 巧美ちゃん、すっかり怒っちゃってるよー?
ちこっと行って、断ってくるから、ね?)
「……」
こしょこしょと控えた声で宥めてみると。
今度は香織は無言のまま。
既にぬるぬるになっている、俺の先端を指の腹で擦って。
「…ッ、あ、はッ…」
双丘の奥の窄まりを、ぐるりと撫でた。
途端、甘い痺れが頭のてっぺんまで突き抜けて。
もう、なんていうか。
あれだ。ほら、骨抜きってヤツ。
ゴメンね、巧美ちゃん。
「くっそー、アイツ等。
この世紀の美少年様がわざわざ声をかけてやってるのに。
盛ってんじゃねーぞ、もう一度ビート版の威力を味あわせてや…むごっ」
「なーにやってンだ。巧美。ほれ、バーベキューが無くなるぞ」
「あ。正宗さん。もう準備終わったんですか?」
「おう。お前等が遅いから読んで来いって、美羽に――って、早ッ」
「兄さんッ?」
「はははははははは、お前等、甘いな。
もう人生の競争は始まってるんだぜ。肉は全部俺のものだー!」
「テメッ! ずりぃぞ! 巧美!!」
遠ざかる足跡が三つ。
そして、部屋に残されたのは。
「……香織。だいじょ、ぶ?」
すっかり元気を無くして項垂れる己に。
ショックの余り呆然とする、香織の姿だった。
すとぷら最新刊のネタです。
なんというか、巧美サマは、かおりんに容赦が無い気が・・・
最新刊はおいしいネタが新鮮でいいですね
ちなみに、うちのメラっちは最初っから、かおりんを『抱く』つもりで
けれど、かおりんが、そこだけは譲りたくないという姿勢なので
受身に回っているというスタンス。
色々な意味でオトナな米良に
常に香織がコンプレックスを抱いてるといい。