
#3
「あ、米良さんだ」
「んあ? おー、ホントだ。よぅ、米良。今日は一人か?」
珍しく一人で町に出たところを、巧美ちゃん達に見つかって、声を掛けられた。
いや別に、見られてマズいような事をしていたワケじゃないけれど。
なんとなく、居心地が悪いのは、後ろめたさの所為なのかな。
「やほー、巧美ちゃん。恒ちゃん。そっちは、今日は二人〜?」
珍しいねー、と他愛無く返す。
事務所の備品買出しとか、ちょっとしたお遣いなんかは、確か、全部恒ちゃんが担当してたはず。他のメンツも揃ってなら兎も角、この二人だけでの外出は本当に、珍しいんじゃないかな。
「おー、この屁ッタレと出掛けるなんざ、お断りなんだがな。オズに用があってよ」
「ヘタレって、ひどーぉい! 兄さん!! 俺は、兄さんを心配してついて行ってるのにぃーーーー!!」
「ぶぅぁーーーか、誰がンなこと頼んだよ。うっとおしーんだよ。シッシ! 帰れ、帰れ!!」
「うわーーーーんっ!! 兄さんのばかーーーーっ!!!」
一通り言い合った後、泣きながら走り出してしまう恒ちゃん。
この程度の喧嘩は日常茶飯事なのか、物別れになった弟を気に掛ける風でもなく、巧美ちゃんはサッサと歩き出した。
「巧美ちゃん〜、いいの? アレ」
「いーんだよ。どーせ、事務所に帰るしかねーんだから」
「そんな冷たくしちゃダメだよぅ? 折角、心配してくれてるのに」
詳しい経緯までは知らないけれど、実家を飛び出した巧美ちゃんを慕って恒ちゃんはこの街にやってきて、そのまま、事務所に居ついちゃったそーだ。
イジラシイ、いい子だ。顔立ちも綺麗だし。さすが、巧美ちゃんの弟。
そんなにまでして自分を頼ってやってくる可愛い弟を、邪険にする巧美ちゃんの気持ち――まぁ、分からないでもないんだけど。
「…フン。よっけーな世話なんだよ。
俺の事はいいだろ。それより、米良。お前、ホント珍しいな。一人なんて。ンだよ、香織と喧嘩でもしたのか?」
「んー、ちょっとね」
「バーカ。お前が、ちょっとって言う時は、大概キてんだよ」
うーん、流石巧美ちゃん。目聡い目聡い。
結構、ポーカーフェイスに自信あるんだけどな。簡単に見破られちゃって、少ーし悔しいかも。
「だいじょーぶだよ。それより、巧美ちゃんこそ。かーわいい弟君が、すくすく成長した姿で自分のトコに戻ってきたんじゃ、色々タイヘンだよね」
「……うっせーよ」
あ、怒らせちゃった。
うーん、しまったな。大人気無かったよな。うん、今のは俺が悪かった。
「…うん、ゴメンね。巧美ちゃん。
八つ当たりしちゃった」
「――ったく、俺は恒探してくるから。お前も、とっとと帰って乳くりあってこいよ」
しょーがねー奴って溜息ついて、キュートな笑顔で毒を吐く、自称魔性の美少年。
巧美ちゃんは、優しいから好き。
一緒にいると、楽だから好き。
「……うん。そだね」
「――米良?」
あ、しまった。
また、しくじった。
巧美ちゃんが、滅多に無い困惑した表情をしてる。
「やー、うん。じゃ、俺もそろそろ帰るねぇ〜。まったねぇ、巧美ちゃん〜♪」
「おー、ヤり過ぎて腰イタめんなよ。ンなもん、オズに診せたら、カッコウの餌食だぜ」
「りょっかーい。じゃぁね〜♪」
感づいてるくせに、何も言わない。
ワザと逸らせた話題に乗って、手を振る。
全部、これくらいの距離でいい。
何時も明るいお兄さんな米良
そんな米良を、いい意味でも、悪い意味でも
理解してあげられる友人だといいと思います
でもって、巧×恒派です(マテ
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