
#32
普段から、バカだバカだと思っていた年上は。
本当に見境無いくらい、大バカだった。
押し倒した体は、一瞬、ヒヤリとする程小さくて軽い。
「香織?」
キョトンと見上げられると、何だか大層――後ろめたい。
中身は兎も角、見た目は完全に若木の。
しなやかな『少年』のそれだ。
おまけに、アルビノの容姿と北欧の血が相俟って。
まるで赤い瞳が美しい、アンティーク人形のよう。
眼帯代わりに巻いてある、左目のハンカチの白さが、酷く痛々しくて。
酷く、艶(なまめ)かしい。
おまけに、シャツは酒で濡れて肌に張り付いて。
胸の赤い印が、うっすらと滲んでいた。
「……ッ、」
ゾクリと、背筋に悪寒が奔った。
ヤバイと直感する。
プレッシャーとプライドで全く反応しなくなっていたはずの半身は。
全く、現金なもので、既に熱を帯びていた。
このまま進んでしまったら、きっと、とんでもない事になる。
必死で理性を総動員して、衝動を抑え込む。
自分で言うのも何だが、ここで止まれるなんて、驚くべき忍耐力だ。
「――兎に角、薬が及ぼす影響もハッキリしてないわけだし。
こんな状況でなんて、絶対、ダメだからな」
「…香織のケチ」
年相応なだけに、むくれる姿が犯罪的だ。
普段の綺麗な年上然とした米良にスネられるのも、甘い疼きを感じて困るのに。
こんな、俺よりも随分若いカッコで――、
「折角のイメクラなのになー」
詰まらなそうに呟いて、押し倒されて沈んだベッドの上に起き上がる米良。
俺から付けられた噛み跡を愛しそうに撫で上げて。
全身からは、焼酎の芳香をさせて。
「うー。でもさ、香織」
陶磁のような白さの肌は、桜色に染まっていた。
おそらく、全身からも揮発した酒が吸収されたのだろう。
「折角だし、チューくらい…、ッ、え、あッ…?」
諦めきれずにキスだけでもと強請ってくる米良の。
その変化に、戸惑う。
「――ッ、く、ぁ…?」
ベッドの上に片膝を立てて起き上がっていた米良は。
急に、本当に突然に。
へたりと、シーツの上に突っ伏してしまった。
「米良ッ…?」
「あぁ!!」
どうかしたのかと肩を掴むと、酷く過敏な反応をされて。
思わず伸ばした腕を引っ込める。
「……ッ、ふ、ぅ」
震えながら掠れた息を紡ぐ様子に、尋常では無いと慌てて。
ロリコン三十路――もとい、尾杜先生に連絡を取るべく。
ズボンの携帯に腕を伸ばして。
縋るように首筋に伸ばされた、小さな指の熱さに、俺は事態を正確に把握した。
「媚薬、か?」
例のごとく白衣の変態に妙な真似をされたに違いない。
どういうつもりなんだか、と闇医者を責めるよりも、何よりも。
この、生殺しのような状況が呪わしい。
「……ッ、た、ぶん。
ど、しよ…、ヘンにな…るッ…」
小刻みに震える唇から、甘く蕩けた吐息が零れて。
チラつく赤い舌に、ぐ、と意識が吸い寄せられた。
濡れて透けるシャツの下で息づく欲望の形が、くっきりと見て取れる。
――ああもう、どうしてくれようか。
「――ッ、ひあッ!?」
このタチの悪い年上の恋人には、本当に敵わない。
若返って随分と縮んだ体を、容赦なく仰向けに直して。
そのまま、シャツ越しに蜜を零す場所を舐(ねぶ)った。
そうしながら、後孔に人差し指を捻じ込む。
全身が性感帯状態なメラは、性急な抱き方にも。
快感を顕にして、ビクビクと跳ねた。
ここまであからさまに反応してくれると、攻め甲斐があるというか。
「メラ――」
「や、ぁッ…、そこッ、っだ、ゃ……ッ」
普段よりも随分小ぶりなそれを、たっぷりとした唾液で濡らしながら。
丁寧に、布越しに唇で扱くと。
微妙なもどかしさが堪らないのか、声の振動だけで、酷くメラはうろたえた。
――愉しい。
ヤバイ、凶悪な気分になっているのが分かる。
猫が、捕らえた獲物を嬲り殺すような、残忍性。
恍惚とした気分に浸りながら。
唇で挟みこんでいた屹立するものを、そっと離して、耳朶を擽った。
「メラ」
進入させた指先で内壁を探るように、時折、内側に爪を立てるように。
少し、意地悪な攻め方をして馴染ませていると。
メラは、頬を染め上げ、逃れるように首を捻じり。
嗚咽のような嬌声で、懇願してくる。
「や、やっ…。
かお、――り…ッ。そ、中、やぁッ……」
「何処が、イヤなんだ?」
「……ッ、ど、こ、って…」
「ココ?」
「ひぁっ!!!」
コリ、と奥のしこりのようなものを探り当てて指先で捏ねると。
しどけなく左右に開かれた幼い内股が、大きく震えて。
濡れたシャツの下で、性が弾けたのが分かった。
「…やらしいな」
潜めたようなそれで囁くと。
「…ッ、って、か、おりが――、指っ…」
快感に潤んだ瞳で、非難がましく見上げられた。
ああ、本当に――分かってない。
「――ァッ…? や、…だっ、やぁ」
まだ、指はメラの中に埋めたまま。
弄(まさぐる)ように蠕動させれば、ぴんと、四肢に緊張が奔る。
「メラ。流石に、入れるわけにはいかないから」
「……ッ、ふ?」
メラの感じる場所を指先で掠めながら、含ませるように、囁いて。
「だから、このまま指と口で、イカし続けてやる」
「……! か、かおッ…、あっ…ァッ」
余りの爆弾宣言に、流石に慌てたようだが。
ぐりっ、と弱い場所を強く突いてしまえば、直ぐに声は甘く滲む。
「ひっ、……ん、ンッ…」
キレイで淫乱なアルビノは、呆気なく、篭絡して。
ただ、絶え間ない快楽に、激しく乱れた。
カオリsideからです。
かおりたんは、年上の恋人に対しては、歯止めがきなくなったり。
余裕がなくなったり。
そんな、お互いにイッパイイッパイなカンジが好物です。
流石に、中学生くらいのカラダに突っ込むわけにはと
そんな常識人な判断が、逆にメラっちには辛いという。
天然に攻めるかおりんがいいと思います。