
#33
「は、ァ…」
昂る熱を持て余して身じろぐと。
ガチャリと、手首に嵌められた手錠が倒錯的な音をたてた。
長い、鎖でつながれたそれは。
愛用している仕事道具の一つだ。
まさか、自分が使われるような日が来るとは思っていなかったけれども。
「…か、おり。ダ、メ…、これ、はずし…」
「――…凄い効き目だな」
欲に濡れた、香織の声に煽られる。
シャツの感触さえもどかしがる反応が楽しいのか。
生乾きのそれは、まだ体にまとわりついていた。
「ン…、んっ…」
前、触りたい。
ヘンになりそう。
だけど、捕らえられた両手は、虚しく空を掻くだけ。
「かお…り…っ、ヤ、ダ。さわっ…て…、おかしく、な…」
「――…メラ、これ以上は…。
お前の体に負担が掛かりすぎる」
俺の懇願に、頬を赤らめて視線を逸らす香織の。
散々、体を交えても、それでも羞恥が抜けない恋人の。
初々しさに、トクンと鼓動を跳ねさせながらも。
カラダは、それどころじゃない。
「――全く、あのヤブ医者ッ…。コイツになんてもの仕込んだんだッ…」
忌々しそうに舌打ちする姿も、可愛い。
あの、ふわもこの黒髪にキスしたいなーって、条件反射のように思う。
あ、ダメだ。
そういう事考えちゃうと、体中の痺れが強くなる。
「ひ…ぁ…ッ、か、おり…、も、ダ…メッ。
お、ねが…、っ、さ、わッ…」
「ッ…メラッ…、ばっ…」
すりあわした脚を、控えめに、だけど淫らに自ら開いて強請る。
自分でも、相当な格好だという自覚はあるけど。
どうにも止まらない。
「〜〜〜必死で我慢してるのに、お前はどーしてそう…ッ」
己の中の若い衝動をなんとか律している香織は。
とろとろになって曝け出された蜜の場所に。
降参とばかりに、ぬめった舌を這わす。
「ひ…、ぁ…、アッ…。かお…りッ…ぃ」
――キモチイイ。
うっとりとして、感じるままに声を上げた。
さっきから、イキっぱなしで。
甘い熱は収まるどころか、全く衰えを見せずに。
失神でもしてくれれば良いのに、と自分でも思うんだけど。
恐ろしいことに、クスリが効きすぎていて。
それすら、許されない。
ピリリ…、と、トンでいた意識に電子音が届く。
と、香織は名残惜しそうにフェラを止め、口元を乱暴に拭うと。
ベッドの脇に放り出された服の上。
携帯電話を拾い上げた。
「……ッ、ふ…」
当然、中途半端に放り出されたコチラとしては、辛い。
香織に自分で慰められないように、両手も縛られてるし。
「尾杜先生ですね? ええ、――ええ。そうです。
笑い事じゃありませんッ、効きすぎて大変な事に――!
――え? …そ、れは…、大丈夫、みたいですけど。
え? ちょっ…、だけど米良は今ッ……!!
〜〜〜ッ!! そんな事させるわけないでしょう!!」
ピ、という音。
どんなやり取りがあったのか、聞こえるはずもないし。
正直、今はどうでもいい。
「かお…り…」
クゥ、と甘く鳴けば、戸惑いの色を滲ませた黒の瞳が返された。
「……? ど、したの…?」
瞬きを繰り返し、微かな抵抗で熱を逃がしながら。
大切な恋人を伺うと。
香織は手にした携帯を、腹立たしそうに、投げ捨てた。
――珍しい。
「…尾杜先生と連絡がついて――、対処法を聞いたんだが…」
「……?」
こののっぴきならぬ状況の解決策が見つかったのなら。
もっと、晴れ晴れしい顔をしていてもいいはずなのに。
何やら、香織は困り果てているようだった。
取り合えず、続きをしてもらえないかと。
濡れた瞳を瞬かせて、哀願する。
「かお、り…、して…くれない…の?」
「――ッ、メラ…。
後ろ…平気、か?」
「……?」
はふ、と熱い呼気が漏れる。
問われた意図を測りかねる俺に、香織は、更に困ったようだった。
「…その、――だ、から…。
ちゃんと…抱いても…、……」
耳まで真っ赤な香織が可愛い。
本当に、性に関する言葉を口にするのが苦手で。
そんなトコも大好きで愛しい、俺の、恋人。
は、とても常識人なので。
ちょっと、驚いた。
「……?」
確かに体格的に問題はあると思うけど。
でも、この年には十分そゆことしてたし。
別に俺としてはヘーキ。
むしろ、ちゃんとしてもらえてないから、切ない位。
「俺は、……ちゃんと、――欲しい、よ?」
けど、大丈夫かな。
だって、香織は。
「でも…、 そ、の …。
かおり、こそ … へーき?」
「………」
何が、とは口しないけど。
おそらく、正しく問いの意味は伝わって。
「いくら今の俺でも、こんな据え膳を前すれば――…」
照れて言いよどむ姿が可愛らしい。
俺に、欲情して、力を取り戻したのなら嬉しい。
恋人冥利に尽きるというものだよね。
「… かおり …、 大好き 」
心が求めるままに、ふわりと微笑めば。
案の定、まだ経験の少ない香織は。
とっても簡単に、手の中に堕ちてきた。
「ン…っ」
深く、口唇が合わさって。
前と後ろをキレイな香織の指が、同時に優しく揉み解す。
「…ン、んんっ……」
強すぎる快感に、思わず抵抗の意思を見せた腕は。
ジャラ、と倒錯的な音に阻まれた。
「〜〜〜ん、……、んン…」
苦しい。
そう思うと同時に、執拗なキスからは開放されて。
けれど、咄嗟に大きく酸素を求めた瞬間に。
タイミングを合わせるように、攻めが激しくなった。
「ひッ、あアんっ…!!」
思わず大きな声があがってしまう。
そして、奥に指が入り込んだ。
けれど今度は、こんなの、序の口。
これからもっと熱くて大きいので満たされる。
少しの不安と――淫らな期待に心は震えて。
それを、怖さの所為だと理解したのか。
香織は辛そうな表情を見せた。
「すまない…メラ。でも、ダメだ。
俺は――他のヤツにお前を抱かせるなんて、イヤだ」
「……?」
愛の囁きの間も止まらない愛撫の手に。
完全に翻弄されながら、俺は視線で意味を問う。
「…あの医者が言うには…、
その――ちょ、直腸に…せ、精がかかれば…いいそうなんだ。
そうすれば、効果が…、中和される、からって。
だから、俺でなくても構わないって。
けど――絶対に、イヤだ…」
うん。それは俺も嫌だなぁ、って。
抱かれるのも、抱くのも、キライじゃないけど。
でも今は、香織以外とはこんなこと、したくない。
愛されて満たされる。
幸福感に一杯になりながら、俺は。
「……大好きだよ。かおり」
精一杯の愛を、世界よりも大切な人に、囁いた。
ヤってるだけの話・・・。(え
とりあえず、お互い隙なんです。それだけです。
結局、メラっちはかおりんを食べれませんでした。
まァ、米良は香織とえっちぃ事できれば
なんでも構いませんので、おーるおーけです。はい。