
#4
もう、随分遅い時間なのに、俺たちが借りている部屋は暗いままだった。
カチャン、と。
ドアノブを回して呆気無く開く扉。
香織の心も、こんな風に簡単に暴かせてくれたらいいのになんて。
脈絡の無い事をつらつら考えながら、靴を脱ぎ捨てる。
「ただいまー、香織〜?」
戻ってないのかな?
社長の身内扱いの香織は、たまに、急な都合で仕事に呼び出される事があるから。
予定外に部屋を留守にするのなんて、さして、珍しい事じゃないんだけれど。
リビングの電気を点けて、暖房のリモコンを探す。
「さむ…」
寒いのは苦手。冷え性だし。
普段なら思いっきり香織にくっついて甘えるのに。と残念がりながら、取り合えずエアコンを強にしておく。それから、珈琲でもとキッチンへ移動した。
「米良。おい、米良」
軽く肩を揺すられて、何処か遠慮がちな声に導かれて、意識がぼんやりと覚醒した。
「……かおり?」
暑さにも弛める事の無い襟元までキッチリ留められた、見慣れたストイックな黒スーツ。
俺の、大事なパートナー。
優しくて可愛くて大好きな、俺の香織。
「こんなところで寝るな。風邪を引くぞ」
「……う〜」
「ほら、起きろ。寝るなら、ちゃんとベッドに行け」
「……む〜」
包み込むような響きが気持ちよくて、ついウトウトしてしまう。
……香織の声、好きだな。
「米良。聞いてるのか?」
生返事ばかりで、一向に動こうともしない俺に焦れて。
香織の、俺を呼ぶ声に呆れと諦めがいっしょくたに滲む。
「んー…。香織、好き〜…」
「……」
困ってる困ってる。
どうするかなーって、半分以上寝入った頭で様子を伺っていたら、香織の足音が遠ざかっていった。
……ちょっと、ショック。
明日、巧美ちゃんに慰めてもらおう。
と、思ってたら、直ぐに戻ってきてくれた。
ふわりと暖かい毛布の感触。右肩に感じる、心地よい重み、暖かさ。
「……米良」
暖房の効いた部屋、傍らに、大切な人。
温もりが、触れ合った場所から沁み込むように広がってゆく。
たぶん、これが幸せと呼ばれていいものなんだろうな。
「……俺の為に無茶はするな」
それはいくら香織のお願いでもきけないなー。
「これじゃ…、いつまでもお前に護ってもらうんじゃ。何のために――俺は…」
……? 香織?
寂しそうに身膝を抱える愛しい人を、その痛ましい心ごと全部、抱き締めて――
抱き締めたいのに。
――すぐそばにいるのに、君を見つけられない。
というわけで、散文。
どんどん暗くなってるので、次回は、甘甘イチャイチャを目指すか。
ちなみに、上から全部繋がってます。別々でも読めますけど
・・・読めるかな・・・?(自信ゼロ)
まぁいいや、んでは、ブラウザは閉じてお戻りくださいナ。