
#7
巧美ちゃんのイタズラを完全に誤解した香織の後を追って。
俺は、治安の悪い掃き溜めのようなこの街を歩いていた。
――いやうん、最初はちゃんと走って探してたんだよ?
でもほら、見つからんないし。
あっちこっち駆け回ってると、悪目立ちしちゃうし。
決して、走りつかれたわけじゃないんだよ?
「うーん」
巧美ちゃんの探偵事務所を飛び出してから、かれこれもう一時間近く。
ダメ元で香織のケータイに電話してみたけど――やっぱり、電源切ってある。
困ったなー、香織の行きそうなところは全部当たったけど、いないし。
というか、そういう直ぐに見つかりそうなトコに居るわけないよね。
「うぅー…ん」
会社にも連絡したけど、帰ってきてないって言うしなー。
「うん。仕方ない。とりあえず、家に帰るか」
もしかしたら香織も居るかもしれないしね。
そう思いつくと、俺は、一直線に賃貸しているマンションを目指した。
「かーおーりー?」
玄関を開けて、まずはその一言。
あ、香織の靴発見。
帰ってきてたんだ。
とりあえず良かった。
「かおり〜? ただいまー」
うーん、返事してくれない。
怒ってるのかなぁ…。
香織は怒ったり拗ねたりすると、直ぐベッドに潜りこんじゃうから。
「か〜お〜り〜?」
おそらく、寝室だな。うん。
そうあたりをつけて、ベッドルームへ向かう。
案の定、ベッドの上に人ひとり分の膨らみを見つけた。
普段は隙なんて全然見せないくせに、時々、こういう子どもっぽとこがあるんだよね。
……可愛いよなぁ。
「香織。ただいま」
ベッドの端に腰を下ろして、ちょっと低音で囁いてみる。
「着替え届けてくれてありがと。助かっちゃった」
ぴくりともしない。
これは――相当怒ってるなぁ。
でも、アレは巧美ちゃんのイタズラなんだし、実際には何も無いんだし。
ちゃんと、潔白証明して、お帰りのチューをしてもらわないとね。
「かーおーり。怒ってる?」
ちょっと趣向を変えて、甘えまくり作戦だ。
「ごめんね。ヘンなトコみられちゃったね。でも、アレはただの巧美ちゃんの悪ふざけだよ。ね、機嫌直して〜香織〜、ね〜、ごめんってば〜」
「………」
もぞり、と。
布団の下の塊が反応した。
よし、この調子だ。
「お詫びに、なんでもしちゃうから。ね?
なんか食べたいものある? 張り切って作っちゃうよー」
「………」
もぞもぞ、と塊が起きだした。
憮然とした表情の香織と、パチリと目が合う。
――目蓋が腫れてる気がする。
泣いてたのかな…。
香織、繊細だからなー。もー、巧美ちゃんのバカー。
「……も…」
「ん? なになに?」
擦れた声で、ボソリと呟く声を一生懸命拾う。
「本当に、……なんでも?」
聞き返すと、不安そうな上目遣いで、そう問われた。
頭からすっぽりシーツを被ってる姿が、猛烈に可愛い。流石、俺のハニー。
「うんうんうんうん。なんでもしちゃう。ね。だから、機嫌直して?」
「……なら…」
一日、お前を俺の好きにさせてくれ、ってお願いされちゃった。
そんなのお安い御用っていうか、寧ろ、大歓迎!
「ぜんっぜん、おっけーおっけー。もーまんたーい。
それじゃ、明日にでも二人でお休み取ろうか? 何処かに出掛ける? それとも……」
一日、部屋にいて一緒にのんびりしよっか? って、言いかけて。
「……お前と一日、部屋にいたい…」
伸びてきた腕と、絡みつくキスにその先を遮られた。
だんだん、連載モノ色が強く・・・
まぁ、それはそれとして。えっちの時には、香織たんが上です
そんな力関係がスキです。好みです
ブラウザ(IE等)は閉じてお帰りくださいね〜